症状が同じように見えても原因が違うと使う薬や治療方法が違いますし、魚の状態によっては強い薬を使うと逆に魚を弱らせてしまう場合があるので、病気の治療についてはご説明が難しいのですが、避けて通れませんので、主な病気についてご説明したいと思います。 まず最初は、すでにご存知の事ばかりかもしれませんが、治療をする上で注意して頂きたいことからご説明します。
<池の水量や魚体重を正確に量る> 池の内寸の縦、横、水深をメートルにして掛け合わせた数値が立方メートルとなり、1立方メートルが1トン(重量)になります。 池の内寸の縦、横、水深をセンチで掛け合わせた数値が立方センチで、1立方センチが1ミリリットル(1シーシー)(水の体積・池の容積)で、1,000ミリリットル(1,000シーシー)が1リットルになります。さらに、1,000リットルが1トンになります。(正確には、水温により体積や比重が変わりますが、誤差の範囲と考えてよいでしょう。) 例えば、縦1メートル・横80センチ・水深20センチなら、1メートル×0.8メートル×0.2メートルで0.16立方メートル=0.16トンになります。 同じように、縦100センチ×80センチ×20センチで160,000立方センチ=160,000ミリリットル(シーシー)で、1,000で割って160リットルとなります。また、160リットルを1,000で割って、0.16トンとなります。
餌に添加して食べさせる薬の場合は、魚体重を正確に量ってください。 薬を添加すると餌食いが悪くなります。餌が長時間水に浸かっていると、せっかく添加した薬が溶け出してしまいますので、通常より少し減らした分量の餌に薬を添加し、できるだけ短時間で食べ終わるようにします。
<薬の量を正確に量る> 薬の量を、秤を使って正確に量ってください。薬の量が足りないと効果が出ませんし、多すぎると薬害の原因となります。目分量は事故がおきる元です。 また、薬の使用説明書には水の重さ(トンなど)に対しての使用量が記載されている場合と、体積(リットルなど)に対しての使用量が記載されている場合があり、食べさせる場合は魚体重に対しての使用量が記載されていますので、使用量を間違えないようにしてください。 薬も大袋で買うと割安になりますが、使用量の計測が大変なので、自分の飼育池の水量に合わせた使いやすい量が入った薬の購入をお勧めします。 尚、0.1グラム単位で計れるような秤や、塩分濃度計などを揃えて頂けるとよいと思います。
<病気の種類を見極めて薬を選ぶ> 病気にあった薬を使用しないと効果が出ません。顕微鏡を使って病原菌や寄生虫を特定するのが理想ですが、薬の販売店や愛好会の先輩方に聞いて、病気にあった薬を選んでください。
<薬を間違えないようにする> よく似た名前や色の薬でも、使用法や使用量が違う薬があります。また、使用する薬の有効成分の含有量(濃度)が違う場合がありますので注意してください。 例えば、水産用パラザン(粉末)は餌に添加して食べさせますが、パラザンDは池に散布して使います。また、水産用パラザン(粉末)の有効成分の含有量が最近変わりましたので、以前と同じ量を使用すると使い過ぎになります。 散布後に水が青くなる薬でも、メチレンブルー(一般的)とマラカイトグリーン(強い)では使用量が約10倍違うので間違えないように注意してください。
<池の水温に注意する> 水温により使用量が変わる薬がありますし、水温を上げることにより治療効果が高まる場合があります。 例えば、テラマイシンは水温が低い時は(適正な使用量の幅の中で)多めに、水温が高い時は(適正な使用量の幅の中で)少なめに使用します。 マラカイトグリーンは、水温が高いと毒性が強くなるので、水温が30℃以上では使用しません。 また、エラ病の場合は、薬の使用と同時に水温を上げることにより治療効果が高まります。
<薬を撒く時間に注意する> 紫外線により分解される薬もありますし、効果が強くなる薬もあります。 例えば、エルバージュは紫外線で分解されやすいので、夕方に撒くか日中は遮光をします。 安定化二酸化塩素は紫外線に当たると効果が強くなりすぎますので、散布した後は日中に遮光をします。
<薬の組み合わせに注意する> 薬の組み合わせにより効果が増す場合と、害になる場合があります。複数の薬を組み合わせて使用する場合は注意してください。 薬同士ばかりではなく、塩と併用する場合も、同時に使えない薬がありますので注意が必要です。
<魚の状態を見極める> 当歳魚や病気が重症の魚は、親魚や病気の軽い魚と比べると体力が無いので、薄め(少なめ)に薬を使わないと、一般的に適正な使用量の範囲内でも逆に魚を弱らせてしまう場合もあります。魚の状態に注意して、薬の種類や使用量を加減してください。
<酸欠に注意する> 薬を使用すると酸欠になりやすいので、十分なエアーレーションを行います。
<早期発見、早期治療に徹する> 病気の発生を早く見つけて、症状が軽い時に治療したほうが、治りが良く(早く)なります。
<病気の予防を心がける> 病気にならない飼育管理が理想です。丈夫な魚を育ててください。
<治るまで治療する> 病気の治療を始めたら、必ず完治するまで治療してください。途中で治療をやめると、薬に対する耐性菌(薬が効かない強い病原菌)ができてしまいます。
<時々薬を替えてみる> 同じ病気に同じ薬を使い続けると、だんだん薬が効きにくくなる場合があります。薬を替えて使用するのは、耐性菌の出現を防ぐことにもなります。
<自分の体に薬がつかないように注意する> 薬を使用する際は、目や口に入ったり、鼻から吸い込んだり、手に付かないように注意して、メガネ・マスク・ゴム手袋などの使用をお勧めします。服に付くと色が落ちない場合もあります。
<薬の有効期限と保存に注意する> 薬には有効期限があるので、その有効期限内に使用してください。 熱や湿気で成分が変化することも考えられますので、有効期限内でも薬が固まっていたり、色が変色しているような場合は使用しないでください。 必ず湿気のない冷暗所で、子供の手の届かない所に保存してください。
<薬を使用した後、魚の状態に注意いする> 薬を使用した後は、魚の状態に異常が無いか注意して見てください。 特に、短時間の薬浴をする場合は注意が必要で、説明書にある適正な時間内でも、魚が鼻上げ(水面で口をパクパクする。主に酸欠が原因)したり、横になってしまうような場合は薬浴を中止してください。
<消毒の方法> 主に次の3通りの方法がありますが、それぞれに一長一短があるので、魚の状態や目的により適した方法を選んでください。
「短時間薬浴」・・薬の濃度を濃くして、短時間で薬浴を済ませ、魚を池へ戻します。 利点・・・名前の通り、短時間で消毒を済ませることができます。また、病気が治るまで目的の魚だけを繰り返し消毒することができます。 欠点・・・薬の濃度を濃くして行うので、弱っている魚には行えません。また、指定された時間内でも、鼻上げしたり横になったりすることがあるので、必ずそばで見ている必要があります。
「隔離消毒」・・消毒や治療をする魚を別の容器へ隔離して消毒します。 利点・・・目的の魚だけを消毒できます。品評会から戻った魚などを行う場合は、感染しているかもしれない病気の広まりを最小限に抑えることができます。 欠点・・・小さい容器を使用するときは、酸欠や水質の悪化に注意が必要です。1尾だけ隔離する場合は、魚が寂しがるせいか、なぜか症状が悪化する場合があります。
「池全体への消毒」・・魚が入っている池へ直接薬を入れる消毒です。 利点・・・感染しているが発病していない魚も消毒できます。また、池を消毒できます。 欠点・・・水が汚れている池へ薬を散布すると、水質がさらに悪化してしまうことがありますし、汚物が薬を分解してしまい薬効が下がる場合があります。
<その他> 薬に特徴がある場合があるので、購入店でよく聞いて、使用説明書の注意書きをよく読んで使用してください。
品評会や勉強会へ出品した魚を持ち帰ったら、必ず消毒することをお勧めします。品評会や勉強会に出品することによる、急激な水温や水質の変化、軽い酸欠、スレ、ストレスなどにより、健康な魚なら寄せ付けないような病気にかかることがありますので注意してください。 病原菌を殺す薬と、寄生虫を殺す薬を併用して消毒するとよいでしょう。
|